前へ(Back)/ /トップへ(Top)/ /モデル紹介へ(Model Guide)/ /次へ(Next)

900S2(Sport 2)


共通仕様82年式83年式84年式

・モデルの概要・
81年、ドゥカティのラインナップに大きな標準化が行われた。 ラインナップの主力がパンタに移行する中、900SSDは、通常の量産モデルとしての製造が中止された。 ベベル・ツインは、900SS及び900MHRに搭載されていたキックスタート・エンジンと、900SDに搭載されていたエレクトリック・スタート・エンジンの2つのバージョンに標準化されたが、900SS及び900SDともに長期間製造され続けており、モデル・チェンジが必要とされていた。

モデル・チェンジに対するドゥカティ社の回答は、900SS及び900SDの「ハイブリッド・モデル」を製造することであり、事実上、これらのモデルの後継機種として発表されたのが900S2である。 900S2は82年中頃から製造が開始され、キックスタート及びエレクトリック・スタートの両方のバージョンを持ち(エレクトリック・スタートの方が多い)、この発売に併せて900SS及び900SDの製造は中止された。 なお、900MHRはフラッグシップ・モデルとして、キックスタート及びエレクトリック・スタートの両方のバージョンが、900S2の製造開始後も継続して製造されている。

900SSD900SDの外装を変更したものであったが、900S2は、77年の900SDの開発以降、初めてのベベル・ギア・コンセプトの再設計であるとともに、本当の意味での900SS及び900SDの「統合」であった。

主要なエンジン変更は僅かであるが、走行器材類の多くは以前のモデルのものとは共用されず、販売促進を狙ってほとんどが新しいものとなった。 最終型の900SSと大きく異なる「新しいスタイリング」は賛否両論があるが、ドゥカティ社の目論見とは異なり、900S2が900SS及び900SDの跡を継ぐことができなかったことは疑いの余地はない。

900S2の総製造台数は、キックスタート・バージョンが352台、エレクトリック・スタート・バージョンが884台で、合計 1236台である。

・年式毎の特徴・
共通仕様

 ・フレーム等
900S2のフレームは、900SS及び900SDの両方から派生したものであり、完全な新設計である。 リア・フレーム・ダウンチューブは、エレクトリック・スタートのための大きなユアサ製19Ahバッテリーを搭載するため、外側に曲げられている(キックスタート・バージョンは通常の12Ahバッテリーを使用しているが、フレームは同じものである)。 このため、900S2のフレームは900SSのフレームより強固ではないが、全ての寸法が大きくエンジンの搭載位置が高かったので、より大きなグランド・クリアランスを確保するため、83年式以降のベベル・ツインのベース・フレームとなった。

900S2にはサイドスタンドは取り付けられておらず、また、スイングアームにはシーリー・タイプのチェーン・アジャスターが装着され、エキセントリック・チェーン・アジャスターは装着されていない。

900S2の外装は、完全に新設計である。 ブラックのロック可能なタンク・キャップは、これまでのベベル・ツインに採用されたものとは全く異なり、650SLパンタと共用のフラッシュ・マウントのキャップであったが、タンク内に水が入りやすく不評であった。 以前のモデルのタンク・キャップには通気上の問題があったが、900S2タイプよりも優れており、900S2のタンク・キャップは実用性ではなく、スタイリングを重視したものである。 燃料タップは、グリーンのプラスチック製燃料ホースを持つパイオリ製のグレーのプラスチック・タップであったが、少数の900S2には900SDタイプのメタル製タップが取り付けられている。

フロント・カウルは、固定のためのアッパー・クロス・ブレースを持っていないが、同じ仕様の他モデルとは異なり、ステアリング・ヘッドにはフリクション式ステアリング・ダンパーも取り付けられていない。 また、ファイバーグラス製のシート・ユニットは、最終型900SSと同様に、テールランプの上まで延長されるとともに、リア・サスペンションの上部を囲んでおり、ラバー製のシート・パッドはシート・ベースに固定されている。

74年式750GT及び750S以来初めて、900S2はブレーキ・キャリパーを後方にマウントするマルゾッキ製フォークを採用している。 フォークは82年式900MHRと同様に、38×590mmのフォーク・チューブと221mmのダンパー・ロッドを持っていた。 マルゾッキ製フォークが取り付けられた全てのモデルと同様に、アクスル・シャフトは右から左に通され、右側フォーク・レグ下の8×60mmのアクスル・クランプ・ボルトで固定されるとともに、6×7mmのフォーク・オイル・ドレイン・スクリューはフォーク・レグ前方にある。 ダスト・シールは通常のものが使用されているが、メタル製のリテーニング・リングは取り付けられておらず、このため、スピード・メーター・ケーブルの位置を固定するためのプラスチック製リングがフロント・マッドガードに取り付けられている。 また、左側フォーク・レグの下部には、通常のイエローの「Marzocchi」デカールが貼られていた。

フロント・ブレーキの仕様は基本的に変更はないが、ブレンボ製キャリパーがフォーク・レグの後方に取り付けられたので、ブレーキ・ラインはメタル製パイプを介さず、全てラバー製となった。 リア・ブレーキのセットアップは、フロントよりも顕著に変更されている。 76年にリア・ブレーキが右側に移動されて以来、全てのモデルにおいてフルード・リザーバーは常に表から見える位置にあったが、900S2では、以前レギュレータが装着されていた位置である、サイド・カバーの裏側に取り付けらるとともに、アルミ製ブレーキ・レバーはリア・マスター・シリンダーに直接取り付けられている。

折り畳み式のラバー付きステップは、フレームのラグに取り付けられたが、8×22mmファスナーを回転させ締め付けることにより、容易に脱着可能である。 リア・セットのギアシフト・レバーは、脱着可能なエンド・ピンを持つ新しいものとなったが、リンケージは以前と同様に、一方がボール・ジョイント、もう一方がU字ピンであった。

900S2には新しいクロムメッキされたクリップオン・ハンドルが採用され、初期の900SSDに近いライディング・ポジションとなっている。 また、ベルリッキ製ハンドグリップは900SSと同じであるほか、クラッチ及びブレーキ・レバーはブラックであった。
 ・エンジン等
900S2のエンジンは、キックスタート・モデルについては900SS、エレクトリック・スタート・モデルについては900SDのエンジンを使用しており、エンジン番号シーケンスもそれぞれ900SS及び900SDと連番である。

全ての900S2のエンジンには、シリンダー・ヘッド・フィンの間に共鳴防止用の75個のラバー製ブロックが挿入されるとともに、3つの8×12×19.5mmのシリンダー・ヘッド・ドゥエルをシールするため、新しい大きなOリングが採用されている。

900S2のギアボックスは全て3ドッグ・タイプであり、クラッチは75年の860GT及びGTSの2回目の変更と同じである(エンジン番号「852178」以降)。 なお、83年の900MHRでは、クラッチの改良が行われているが、900S2には適用されなかった。

900S2のキャブレターは、デロルト製PHF32AD/ASまたはPHM40BD/BSのどちらかであるが、多くの900S2に40mmキャブレターが装着されている。 900SSとは異なり、2つのインレット・マニホールドは同じものであり、32mmタイプにはシールのためのラバー製Oリングが使用されていた。 デロルト製PHF32AD/ASキャブレターのジェッティングは、同じキャブレターを採用していた74年〜79年の860ccモデルと同様であり、後のCD/CSタイプとは異なっている。 32mm及び40mmキャブレターの両方とも、外部チョーク機構を持ち、ヘッドライト左側にチョーク・レバーが取り付けられていた。 全ての900S2は、2つのメタル製エア・フィルター・ボックス及び改良されたクランクケース・ブリーザー・システムを持ち、ブリーザーはシート下のプラスチック製ボックスを介してフロント・エア・フィルターにフィードバックされていた。

エキゾースト・システムは完全に新しくなり、左側エキゾースト・ヘッダーは900MHRと同様に、エンジンに近づけられるとともに、排気焼けを低減するため、2重構造となっている。 900S2にはコンチ製またはサイレンチウム製マフラーのどちらかが装着されたが、900S2の長いフレームに合わせるため、マウント・ブラケットの位置が変更されている。 また、騒音を低減するため、900S2には15歯のエンジン・スプロケット及び33歯のリア・ホイール・スプロケットが組み合わされ、高いギア比となっている。
 ・電装等
81年以降、キックスタート及びエレクトリック・スタート・エンジンの間では異なるオルタネータが取り付けられており、900SDのそれぞれのバージョンでも同様である。 キックスタート・エンジンには既存のオルタネータを採用していたが、エレクトリック・スタート・エンジンには83年式900MHRに採用されるオルタネータが取り付けられていた。 この新しいオルタネータにはプロトルーディング・マグネットがなく、分解には新しいオルタネータ・ロッキング・ツールが必要であった。

イグニッションは、81年に最終的に改良されたイグニッション・ピックアップを持つ、ボッシュ製BTZであった。 スパーク・リードはブラックであり、プラグ・キャップは電気的干渉を抑圧するように設計されている。 また、リア・ブレーキのフルード・リザーバーの位置が変更されたことに伴い、レギュレータはエレクトリック・イグニッション・モジュールとともに、ステアリング・ヘッドの下に移動されている。

テールランプ及びリア・インジケータも、900S2では新しいものが採用されている。 これらのCEV製ユニットは、以前のものよりも遙かに大きく、且つ角張っており、後の900MHRと650SLパンタにも採用されている。 テールランプには、2つの21/5Wバルブが使用されるとともに、リア・インジケータはCEV製及びそれと同形状のもののどちらかが取り付けられていた。

900S2の電装等は900SDの特徴を多く引き継いでいたが、ヘッドライトは900SSと同じ170mmCEV製55/60WのH4ヘッドライトであるとともに、インストルメント・パネル、ワーニング・ランプ(接続されていないサイドスタンド・ワーニング・ランプを含む)及び日本電装製メーターは、900SSD及び900MHRと同じである。 左側スイッチ・ブロックは、900SDと同様の日本電装製のものであるが、エレクトリック・スタート及びエンジン・キル・スイッチと一体となったベルリッキ製ツイン・ケーブル・スロットルが取り付けられている。 900S2に採用された新しい部品の多くと同様に、これはパンタの部品である。
・主要諸元・
フレーム形式DM860SS
091743〜092726
エンジン形式DM860(D)
094236〜096292
907431〜908151
ボア×ストローク86×74.4mm
総排気量864cc
圧縮比9.3:1
最大出力70PS/7800rpm
タイヤサイズ 前輪100/90V18
後輪110/90V18
ブレーキ フロント280mmダブルディスク
リア280mmディスク
ホイールベース1499mm
シート高800mm
全長2220mm
全幅699mm
重量195kg
ギア比 一次32/70
二次15/33
タンク容量18L
キャブレターデロルトPHF32AD/AS
デロルトPHM40BD/BS
総製造台数649
82年式

 ・フレーム等
900S2のフレーム形式は、900SSと同じく「DM860SS」が指定され、フレーム番号も連番とされるとともに、フレーム・ホモロゲーション番号も同じく「DGM 13715 OM」である。 しかし、フレーム形式等が900SSと全く同じであるにも関わらず、900S2のフレームは完全に新設計であった。

82年式900S2のフレームはブラックにペイントされており、フロント・ダウンチューブのエンジン・マウントは、860モデル及び900SDと同じくフラットであるが、900SSと同様にフロント・ダウンチューブとアッパーチューブの間の補強は施されていない。 また、82年式の900MHRと同様に、左側サイド・カバーの横にセンタースタンドをかける際の補助となる折り畳み式のレバーが取り付けられている。 センタースタンドには2本のスプリングが使用されており、スタンド自体の形状は900SDではなく、900SSと同じであった。

この年式のカラーはブロンズ/グレーであり、タンクにはオレンジの「DUCATI」デカールが貼られるとともに、サイド・カバーは、ホワイトのナイロン製ワッシャーを持つ3本のクロムメッキされた6×20mmスクリューで固定され、ブラックのロア・グリルとオレンジの「900S2」デカールを持っている。 サイド・カバーのイエロー、オレンジ及びレッドのストライプは、シート後方に貼られた「900DESMO」デカールまで繋がっている。 900S2のカウルは、900SSではなく、600SLパンタのABS製カウルを改造したものが取り付けられている。 カウルもグレーにペイントされ、シート及びサイド・カバーと同様に、イエロー、オレンジ及びレッドのストライプが入れられていた。 また、オレンジの「DUCATI」デカールがヘッドライトの上に貼られるとともに、左右のカウルを接続するロア・クロスバーにも「DESMO」デカールが貼られている。 なお、左側のエレクトリック・スタート・アセンブリを避けるのにカッタウェイが必要だったため、キックスタート及びエレクトリック・スタート・モデルの間でカウルの形状は異なっている。

初期の900S2のスクリーンはクリアであったが、後に着色されるようになった。 スクリーンを固定するスクリューは、M5×20mmのフラット・ヘッドのマイナス・スクリューである。

900S2のマッドガードは、全て新しくされている。 フロント・マッドガードはブラックのABS製であり、形状は最終型900SS及び600パンタと同様である。 前方にプラスチック製の部分を持つメタル製のリア・マッドガードもブラックであった。 82年式のチェーンガードも、同様にブラックである。

リア・サスペンションは、ブラックのスプリングと、ボディーにイエローのデカールを持つ、新しいマルゾッキ製のものである。 上部のリア・サスペンション・ボルトの上には、ブラックのプラスチック製カバーが取り付けられていた。

900S2のホイールは、ゴールドにペイントされた6本スポーク仕様のFPS製アルミ・ホイールであり、フロントは2.15−18インチ、リアが2.50−18インチであった。 FPS製ホイールは、900SSD900SS及び900MHRと同様に6つのディスク取り付け穴を持つが、900S2の280mmディスクは、ドリル・ホールのパターンがこれらとは異なっている。 このディスクのドリル・ホールのパターンは、螺旋状ではなく3つの穴が並んだ放射状であり、取り外しできるキャリアがない仕様であり、他のモデルには採用されていない。 なお、パーツ・リストには示されていないが、いくつかの900S2には螺旋状のパターンを持つ通常のディスクが取り付けられている。

初期型の900S2は、他のモデルと同様のレバー・ラバーを持っていたが、これらは後にステップ・ラバーに合わせて変更されている。 既存モデルとはフレームの寸法が異なるため、タンデム・ステップは後方に下げられた新しいタイプが採用されている。 また、ネイマン製ステアリング・ロックは、以前よりも僅かに大きなものが使用されていた。
 ・エンジン等
82年には合計649台のS2が製造され、うち173台がキックスタート、476台がエレクトリック・スタートである。

900S2の製造開始後の早い時期に、エンジンの仕様にいくつかの変更が行われている。 エンジン番号「095742」(キックスタート)及び「907429」(エレクトリック・スタート)から、新しいギアシフト・ドラム及びスペシャル・リテーニング・ワッシャーが取り付けられている。 82年末(キックスタート:エンジン番号「096142」、エレクトリック・スタート:エンジン番号「907232」)には、オルタネータ及びレギュレータの変更が行われている。

サイレンサー・ホモロゲーション・プレートは900SSと同様に、右側サイド・カバーの下に装着され、番号も同じく「E3 9R−13716」である。
 ・電装等
フロント・ターン・インジケータは、同じ時期の900MHR及びパンタと同様に、カウルにフラッシュ・マウントされているほか、共通仕様に同じである。
・主要諸元・
フレーム形式DM860SS
092727〜093149
DM900SS
A92727〜A93149
エンジン形式DM860(D)
096293〜097252
908152〜909354
ボア×ストローク86×74.4mm
総排気量864cc
圧縮比9.3:1
最大出力70PS/7800rpm
タイヤサイズ 前輪100/90V18
後輪110/90V18
ブレーキ フロント280mmダブルディスク
リア280mmディスク
ホイールベース1499mm
シート高800mm
全長2220mm
全幅699mm
重量195kg
ギア比 一次32/70
二次15/33
タンク容量18L
キャブレターデロルトPHF32AD/AS
デロルトPHM40BD/BS
総製造台数382
83年式

 ・フレーム等
いくつかの小変更を除いて、83年式900S2は前年式から変更はない。

フレーム自体の形状は、前年式とほぼ同様であるが、左側のセンタースタンド補助用の折り畳み式ハンドルがなくなり、それに代わってマフラー・ブラケットの形状が変更され、その機能を果たすようになった。 83年当初の900S2のカラーはブロンズ/グレーであったが、まもなくブラックの外装にレッドのフレームとなった。 レッド・フレームの採用に併せて、センタースタンドが以前の900SS風ではなく、900SD風に変更されたほか、チェーンガードもレッドとなった。

形状は全く同じであるが、キックスタートの900S2には、新しいフレーム形式「DM900SS」が指定されている。 フレーム番号は、以前と同じシーケンスが続けられたが、フレーム番号の最初の「0」が「A」となっているが、これらのフレームのホモロゲーション番号は、以前と同様に「DGM 13715 OM」であった。

外装のペイントはブラックであるが、オレンジのデカール、イエロー、オレンジ及びレッドのストライプは残されている。 ブラックのペイントに合わせて、サイド・カバーの6×20mmスクリュー及びナイロン・ワッシャーもブラックとなった。 カウルのスクリーンは、スクリューに代わりプラスチック製リベットで留められている。

フロント・フォークには変更はないが、リア・サスペンションはグレー・ボディーのマルゾッキ製リモート・リザーバー・サスペンションに変更された。 これらは最終型の900SDと同じであるが、900S2のリザーバーは前方にマウントされている。

900S2はフレーム形式の変更が多く、また、キックスタート及びエレクトリック・スタートの2つのタイプを持っているため、ベベル・ツインの中で最も混乱するモデルであり、さらに多くの場合、車体の組み立てとエンジンの製造の時期が一致しないため、他のほとんどのドゥカティ・ツインと異なり、エンジン番号よりもフレーム番号の方がモデルの年式等を判別する指標になる。 83年式の特に末期には、多くの900S2が「以前の仕様」で製造されており、これらはブロンズ/グレーにペイントされるとともに、改良前のエンジンが搭載されている。

83年末、モデル・チェンジされた900S2がボローニャ・ショウに展示された。 外装はブラックでフレームはレッドにペイントされていたが、これにはオレンジの「DESMO」デカールを持つアンダー・カウルが エンジン下に装着されていた。
 ・エンジン等
83年式900S2の製造台数は382台であり、内キックスタートが180台、エレクトリック・スタートが202台である。

この年(エンジン番号「096314」以降)、キックスタート・エンジンにはいくつかの重要な変更が行われているが、これらの変更は900SDのエンジンの在庫がある間(84年に入るまで)は、900S2のエレクトリック・スタート・エンジンには反映されていない。

キックスタート・エンジンには新しいクランクケースが採用されたが、エンジン・ケースはスクエア・ケースであり、クラッチも湿式のままである。 ギアシフト・セレクター・ドラムは、両側とも大きな6.5×42mmのスラスト・ワッシャーを使用している。 この改良されたエンジンは、ねじ込み式のオイル・フィルターと、右側クランクケースにオイル・レベル確認窓が取り付けられているので、目視で簡単に判別できる。

シリンダー・ヘッドでは、ブロンズ製のバルブ・ガイドが鋳鉄製に変更された。 バルブ・ガイドはインレット及びエキゾーストで同じでものである。 これらの鋳鉄製ガイドは、81年に変更されたものと同じデザインであり、バルブ・ガイド・シールはガイドの上に被せられていた。 また、900MHRと同様に、スプロケット・ファスナーはM8×40のアレン・ボルトに変更された。
 ・電装等
前年式に同じ。
・主要諸元・
フレーム形式DM900S2
095001〜095202
エンジン形式DM860(D)
909355〜910157
ボア×ストローク86×74.4mm
総排気量864cc
圧縮比9.3:1
最大出力70PS/7800rpm
タイヤサイズ 前輪100/90V18
後輪110/90V18
ブレーキ フロント280mmダブルディスク
リア280mmディスク
ホイールベース1499mm
シート高800mm
全長2220mm
全幅699mm
重量195kg
ギア比 一次32/70
二次15/33
タンク容量18L
キャブレターデロルトPHF32AD/AS
デロルトPHM40BD/BS
総製造台数205
84年式

 ・フレーム等
84年式900S2には、新しいフレーム型式「DM900S2」が指定され、フレーム番号は「095001」から開始された。 これに伴い、フレーム・ホモロゲーション番号も「DGM 51148 OM」に変更されている。

フレーム番号は変更されたが、レッドにペイントされたフレーム自体は83年式から変更はない。 84年における最も大きな変更は、カラー及びグラフィックである。 外装はレッドにペイントされるとともに、3つの色合いを持つシルバーのストライプが入れられていた。 ペイント自体はアクリル・ラッカーではなく、エナメルの焼き付け塗装となり、外装のデカールはシルバーになるとともに、タンクの「DUCATI」デカールは、シルバー及びブラックのプラスチック製バッジとなった。 しかし、いくつかの900S2は前年式と同様にブラックにペイントされ、以前のタンク・デカールが貼られていたが、エンジンは後のタイプが搭載されている。

83年のショウ・モデルに装着されたアンダー・カウルは、外装に合わせてレッド又はブラックにペイントされていたが、ショウ・モデルとは異なりデカールは貼られていない。 アンダー・カウルは、4つのアルミ製ブラケットに固定されていた。

84年初期の900S2は、ゴールドにペイントされた6本スポークのFPS製アルミ・ホイールを装着していたが、ねじ込み式オイル・フィルターに改良されたエンジンを搭載してからは、83〜84年式900MHRと同じオスカム製ホイールを装着している。 これらの最終型900S2はまた、バキューム式燃料タップ及びブラックの燃料ホースも83〜84年式900MHRと共用している。

マルゾッキ製のフォークは、外部ダスト・シールを持つ前年と同じものであったが、レッドの84年式900S2では、フォーク・トップにエア・キャップが装着されていた。 また、パーツ番号に変更はないが、フロント・マッドガードも900MHRタイプに変更された。
 ・エンジン等
公式には、この年式の900S2はエレクトリック・スタートのみが製造され、製造台数は205台とされている。

84年はドゥカティのベベル・ツインの分類上、最も難しい年であり、それを端的に示しているのがこの年式の900S2である。 84年にはエレクトリック・スタートの900S2のみが製造されたが、いくつかの余剰のキックスタート・エンジンにエレクトリック・スタートが取り付けられるとともに、エレクトリック・スタート・エンジンのエンジン番号シーケンスが付与されて出荷されていた。 また、83年末から84年にかけてのエンジン内部の仕様には、多くの矛盾があった。 これは83年に、完成車よりも多くのエンジンが製造され、その在庫を処分するためであると推測される。

公式のドキュメントには、エレクトリック・スタート・エンジンに、ねじ込み式オイル・フィルターとオイル・レベル確認窓があることが示されておらず、エンジン番号「907600」付近のエンジンには、これらの変更が行われているが、エンジン番号「907700」付近には行われていない。 なお、キックスタートのエンジンは、エンジン番号「096314」以降に一律に変更が行われているので、分類はこれほど難しくはない。

84年まで製造が続けられた他のモデル、特に900SDと同様に、製造日付が84年である900S2に搭載されたエンジンの多くは、明らかに82年に製造されて工場に積まれていたものである。

キックスタート・エンジンの変更内容は900MHRと同様であり、右側クランクケースへのねじ込み式オイル・フィルター及びオイル・レベル確認窓の追加を含む。 エレクトリック・スタートの900MHRのエンジンでは、右側エンジン・サイド・カバーにオイル・フィラーが取り込まれているが、900S2ではディップスティック及びプラグが継続され、以前と同様に左側クランクケース上に取り付けられている。

フレーム形式の変更に併せて、サイレンサー・ホモロゲーション・プレートも新しい番号となり、「E3 9R−0040041」及び「E3 9R−0440040」となっている。
 ・電装等
日本電装製メーター及び新しいプラスチック製ワーニング・ライト・コンソールを持つ、インストルメント・パネルは900MHRと共用されるとともに、フロント・ターン・インジケータはフラッシュ・マウントではなくなり、CEV製の四角いタイプとなった。






前へ(Back)/ /トップへ(Top)/ /モデル紹介へ(Model Guide)/ /次へ(Next)