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ベベル・ギア

(Bevel gear)


「ベベル」とは「ベベル・ドリブン・カム・シャフト」、即ち「傘歯車」によってカムシャフトを動かすという機構です。
ドゥカティでは、鬼才ファビオ・タリオーニ技師が1954年のグランスポルト100(レーサー)に採用してから、1986年のMHRミッレまで、実に30年以上に渡って採用され続けたということになります。

作動原理は、左(←)の図(例によって「シングル」です)を見ていただければ「一目瞭然」かと思いますが(ベベル・ギアやアイドル・ギアが逆回転しているように見えますが「目の錯覚」です)(^^;・・・

1. ピストンが上下する。
2. クランク及びクランク・シャフトに取り付けられたギアが回転する。
3. アイドル・ギアの回転を受けて、下側の傘歯車(ロア・ベベル・ギア)の回転し、それに伴いシャフトを介して上側の傘歯車(アッパー・ベベル・ギア)が回転する。
4. カム・シャフトのギアが回転し、カムが動作する。
5. バルブが動作する。

・・・という行程になります。

一般的な「カム・チェーン方式」ですと、「2.」のクランク・シャフト及び「4.」のカム・シャフトにそれぞれスプロケットが装着され、これにチェーンがかけられる形になります・・・また、現在のドゥカティで採用されている「タイミング・ベルト」方式では、スプロケットの代わりに「プーリー」が取り付けられ、これに「ゴム製の櫛歯ベルト(コクド・ベルト)」が組み合わされています・・・動作原理的にはカム・チェーンと変わりません(ただし、カム・チェーン方式に比べて、バックラッシュが小さく、ノイズを低減させるとともに、耐久性を向上させることができます)。
ベベル・ギア方式ですと、エンジン外部にベベル・ギア・シャフトの「カバー」が取り付けられ、これがOHVのプッシュ・ロッドを連想させるためか、「古くさい」と感じる方が多々いらっしゃり、一部では「ハンド・ドリルが回ってるような・・・」と言われる方もいます(^^;・・・まぁ、確かに外観的にはクラシカル(これが「いい!」と言うのが「ベベル・バカ」ですが・・・)であることは否めません。
「最新」と言えば、何と言っても「カム・ギア・トレイン方式」でしょう・・・この方式では、「3.」のベベル・ギア(シャフト)の代わりに通常のギアを組み合わせて、クランクからカムに駆動を伝達しています。

カム・チェーン方式とカム・ギア・トレイン方式を比較すると、カム・ギア・トレインの方が・・・

1. バックラッシュが少なく、高回転でもカム・タイミングの「ずれ」が生じない。
2. ギアの加工精度が必要で、調整が難しい。
3. エンジンをコンパクトに作ろうとすると、ギアの枚数が増え、機構が複雑になる
(例えば、この図のベベル・ギアを「通常の」ギアに置き換えてみてください・・・もし「1枚のギア」で伝達しようとすると、凄まじく巨大なギアが必要になりますね(^^;・・・当然、複数のギアが必要になりますが、そうするとギア比や発生するバックラッシュの調整が更に難しくなります)

・・・ということで、かなりのコストが発生します。

そこで「ベベル・ギア」です・・・要は、カム・ギア・トレインを「1枚ギア」とし、その形を「変形させたもの」と捉えることができます。
従って、カム・ギア・トレインの良さはそのままに、機構を簡単にするとともにエンジンのコンパクト化を図り、更にコストも「多少」低減させることができます。
ベベル・ギアのシングルが登場した当時、市販車はOHVが全盛の時代ですが、MVアグスタやモンディアル等のレーサーでは、既にカム・ギア・トレイン方式が採用されていました・・・最初のベベル・シングルは「レーサー」ですので、カム・ギア・トレインを採用していても不思議ではありません(事実、タリオーニ技師がモンディアルで設計したと言われるレーサーは「カム・ギア・トレイン」です)・・・そこを敢えて「ベベル・ギア」を採用したのは、上記目的のために他なりません。

「コスト低減」・・・とは言っても、ベベル・ギアの加工には「精度」が必要であったことには変わりなく(ドゥカティ社はそのため、非常に高価な工作機械を導入しています)、それに伴い現在のタイミング・ベルト方式に比べると、かなりのコストがかかっていました。

「ベベル・ギア・モデル」の廃止が決定されたとき、その最大の理由は「コスト面」であり、決して「性能面ではなかった」ということを付記しておきます(^^;


デスモと同様、MPEG版のアニメーションを準備しました・・・上図をクリックするとプレーヤーが起動し、アニメーションがスタートします(GIF版よりも更新レートが早いため、アッパー・ベベル・ギアも「ちゃんと」回転して見えてます(^^;)。 また、上図を右クリックし「対象をファイルに保存」を選択すると、MPEGファイルをダウンロードできます。
なお、ダウンロードしたファイルは拡張子が「MPS」となっていると思いますが、「MPG」に変更してください。






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